前号では、「病院で受ける西洋医学の治療と合わせて、代替医療や生活法が『妊娠しやすい体作り』にかかわり、治療の効果をあげることになる」とお伝えしました。今号と次号の2回にわたり、「テーマ=生活習慣」を取り上げ、お話を進めたいと思います。
妊娠に向けてのポイント
人は一般的に時間がくればおなかがすいてきます。そして食べ物を口にします。1日に3度は口にする食事です。今回は妊娠しやすい体づくりにつながる栄養素や食品を加えた食生活について考えてみましょう。でも、口に合う好みの食品、おいしいと感じられる献立、笑顔のある食卓であることもとても大切です。毎日欠かせない食事だからこそ、無理せず、ストレスにならない程度に「妊娠しやすいご飯作り」を目指してください。
1.血流を良くする食事をとる
血液中には酸素と栄養分が含まれます。その酸素と栄養を細胞に届けて老廃物を回収するのが血液の大切な役割です。卵子や精子も生きている細胞なので、栄養分が豊富なサラサラの血液であることが望まれます。卵子の質、精子の質も基本は血液の流れで育つからです。
また、受精卵が着床する子宮内膜は、血液がサラサラの状態であれば子宮に酸素と栄養がいきわたり、子宮内膜は厚くなり着床しやすい環境を準備することにも役立ちます。それ以外にも、女性の場合、月経周期によってホルモンのバランスが変わりますが、血液には、各器官に必要な体内で作られたホルモンの情報伝達物を届けるという役割があります。薬などの薬剤成分は血流に乗って体内の器官に運ばれるので、血流がよいと薬の効果は高く、反対に血流の良くないと薬の効果を低くすることになるともいえます。血液が担う役割から考えると、血液がサラサラに体内を流れることがとても大切なのです。
〈血液の仕事〉
- 酸素や栄養を運ぶ
- ホルモンなどを運ぶ
- 体温を一定に保つ
- 病原体からの感染を防ぐ
血液は大切な役割を果たしています。
循環が悪くならないように血流をよくしていきましょう。
☆血液をサラサラにする…元気な細胞にする
血液をサラサラにする食品には
魚 | いわし、さばなど、特に青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は赤血球や血小板に作用して血液の流れをよくするといわれています。 |
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海藻類 | わかめ、モズク、メカブなどの海藻に含まれるぬめり成分であるアルギン酸が血糖値の上昇を防ぎ、コレステロール値を下げるといわれています。 |
きのこ類 | しいたけ、まいたけ、シメジなど、きのこにはβ-グルカンという多糖類が含まれ、コレステロール値や血糖値を下げ、免疫力を活性化するといわれています。 |
納豆 | ナットウキナーゼという酵素が血栓を溶かし血液をサラサラにするといわれています。 |
緑黄色野菜 | ブロッコリー、赤ピーマン、かぼちゃなど色の濃い野菜にはビタミンCやβ-カロチンなどの抗酸化作用があり、白血球同士がくっつくのを予防し血液をサラサラにするといわれています。 |
その他野菜 | たまねぎ、長ネギをはじめ、にんにくなどに含まれるアリシンには血小板の凝集を抑制し、血栓を予防する働きがあるといわれています。 |
酢 | 酢酸やクエン酸が赤血球の膜を柔らかくし、動脈硬化を予防するといわれています。最近では習慣性流産・不育症にも血流との関係がいわれています。「血液サラサラ」で血流がよいということは流産や早産の予防にもなり、血栓が原因で起こる病気にも予防になるはずです。健康な体を維持することがいろいろな原因を改善していく入り口になるかと思います。 |
2.抗酸化物質を含む食品を摂取する…細胞を老化させない
血液の流れの次は健康な体を維持するために心がける食品についてです。活性酸素は多すぎると体を酸性化し、あらゆる器官に何らかの悪影響を与えて、細胞をはじめ器官を老化させてしまいます。 卵子や精子の質の低下にも関係するので、活性酸素を取り除くためにも関与するミネラルをはじめビタミン、植物栄養素など抗酸化物質を多く含む食品の摂取に心がけてください。
☆活性酸素を減らす「抗酸化物質」
ミネラル | もともと体内にあるのですが加齢と共に少なくなります。
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たんぱく質 | (肉や魚、卵、豆類など) 人間の皮膚・筋肉・内臓・血液・毛髪・つめなどを形作り、いろいろな酵素や遺伝子、ホルモン、免疫、抗体などの生成にかかわっています。食品中に含まれるたんぱく質を意識しながらとることは、抗酸化物質の酵素を生成するうえでとても大切です。 |
ビタミン | 体内では作られていないので、外から食品として摂取する必要があります。ビタミンは酵素の働きを助けるという重要な役目を担っています。ビタミンが不足すれば酵素がうまく働かず、活性酸素を取り除く働きがうまく出来ません。ビタミンは抗酸化物質としても重要な役目を果たしているわけです。
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ポリフェノール | 体内には存在しないので、外から摂取する必要があります。 |
カロテノイド | ビタミンと同じように抗酸化作用効果があります。
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3.体を温める食事をとる…体に元気なリズムを作る
「私は冷え性みたいです」という女性が多くおられます。エアコンが効いた部屋で過ごし、日頃から冷たい飲料をはじめアイスクリームなどの冷たいデザートが大好きで育ってきた世代では、当然のことと思います。薄着やミニスカート、体の露出部分が多いほど、体の温度は冷やされてしまいます。食事で血流をよくし、気をつけても体が置かれた環境があまりよくないようでは、効果も半減することになってしまいます。体を温め、血流をよくするためにも食事の習慣と共に、生活習慣も健康を意識したものにしていくことが望まれます。
☆体を温め血行を良くするポイント
- 土の中で育つ野菜は体を温めます。大根、人参、サトイモ、ごぼう等は煮物や汁物に最適です。簡単レシピで具沢山の豚汁がお勧めです。
- しょうが、唐辛子などは体を温める効果があります。
料理のスパイスとしてだけでなくメニューの中で利用してみてください。
寒い夜にはしょうが入りのお茶は体をとても温めてくれます。
蜂蜜と生姜の絞り汁を熱いお湯で溶き、好みでレモンや柚子をトッピングすると、疲れた体を回復し、風邪の予防や血行促進にも役立ち、夜はしっかり熟睡できます。 - 冷え性の方には「あったかサラダ」がお勧めです。 生野菜はほてった体を冷やすので、夏や気温の高い日中には心地よいものです。でも、日が落ち、気温が下がれば、体を冷やすことになり、冷え性の方にはあまりお勧めできません。キャベツや人参、豚肉、ブロッコリー、かぼちゃ、きのこ等を蒸して、たまねぎドレッシングで食べる「あったかサラダ」はいかがでしょう。カロリーが気になる時は、和風ポン酢でさっぱり食べてください。
- ご飯は白米より玄米や五穀米がお勧めです。
玄米や五穀米にはビタミン、ミネラルなどの栄養素が多く含まれます。 白米ばかりではなく、時々は玄米や五穀米を食卓に!
4.体重管理を意識して食事をとる
食習慣の中で大切なポイントは「自分の適正体重」を知るということです。 やせすぎたり、太りすぎたりしていると、血液の流れが悪くなり、ホルモンのバランスが崩れて排卵や着床に影響を与え、不妊の要因にもなりかねません。まずは「BMI」(体格指数を出す計算式)で、標準体重かどうかを割り出したうえで、適正体重を守るようにすることが大切です。最近は内臓脂肪が多い隠れ肥満の人も増えているので、血液検査でコレステロールや中性脂肪をチェックしておくことも必要です。食事は健康な体作りに一番大切です。 体重管理は重要なテーマなので、BMIを含めて次号で詳しくお伝えします。
5.インスタントに頼らない食事をとる
買い物に出かけるとつい買ってしまうのが、出来合いのお惣菜やお弁当です。 忙しく時間に追われる毎日の中で、つい手が出てしまいますが、体のことを考えて選んでいただきたいと思います。食品添加物、防腐剤、着色料・・など、環境ホルモンとして体に影響を及ぼすものもあります。健康を見直したい今だからこそ、インスタント食品は控え目にしたいものです。
6.お酒とタバコについても考えておこう
お酒は食事そのものではありませんが、「食前酒」ともいわれるように、好きな人にとっては欠かせない食生活の一部となっています。不妊治療の観点からは、男女共に必ずしも悪いとはいわれていませんが、飲みすぎには注意が必要です。とくに妊娠後は胎児に影響が出るといわれていますので、十分に気をつけましょう。 喫煙は百害あって一利なしです。活性酸素が高くなり卵子や精子の質を下げてしまうことになります。喫煙する本人だけでなく、副流煙は家族にも悪影響を与えます。不妊治療を受けておられる方はぜひ、禁煙に努めてください。
緊急アドバイス!
ユーカリプタスで新型インフルエンザの予防を心がけましょう。
この原稿がサイト上にアップする頃には、新型インフルエンザが大流行しているのでは…と心配でたまりません。一方、体に基礎的な免疫能がある方は感染しても軽症で済む可能性があります。栄養バランスの良い食事、季節に応じた旬の食材の多用は免疫能アップにつながります。合わせて、当院アロマテラピー教室の講師によると、ウイルスの感染予防や喉の痛みなどの初期症状の軽減には、ユーカリプタスというエッセンシャルオイルが有効とのことです。使い方はモーニングカップにお湯を入れ、数滴オイルを垂らして室内に香りを。あるいはハンカチやマスクに数滴落として鼻や喉にあてます。実際にお使いになる際にはぜひ、アロマテラピストのアドバイスを受けるようにお勧めします。
不妊カウンセラー 西山純江