不育症とは妊娠はするものの流産や死産、種々の妊娠異常により生児を持つことが出来ない状態のことを言います。 不育症外来では、2回以上の流死産を経験された方、1回でも10週以上で子宮内胎児死亡を経験された方、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全といった妊娠中の異常を経験している方など、次回妊娠での流死産のリスクが高い患者さんに対し、原因検索することをお勧めしています。
不育症とは妊娠はするものの流産や死産、種々の妊娠異常により生児を持つことが出来ない状態のことを言います。 不育症外来では、2回以上の流死産を経験された方、1回でも10週以上で子宮内胎児死亡を経験された方、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全といった妊娠中の異常を経験している方など、次回妊娠での流死産のリスクが高い患者さんに対し、原因検索することをお勧めしています。
不育症の原因は、感染症、内分泌異常、子宮形態異常、染色体異常、免疫学的異常、血液凝固異常など多岐に渡っており、系統立てた検査が必要です。当院では厚生労働科学研究費補助金、成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業研究班が提示する「不育症管理に関する提言2021」に沿った検査項目を参考に検査を行っております。詳細については診察時にご説明します。
不育症の原因検査、結果に応じた治療方針を提案し、必要な方には抗凝固療法(アスピリン・ヘパリン)を行います。
不育症検査の結果説明では流産の原因となりうる項目について、リスク因子という言葉を用いて説明をしています。検査結果で見つかった異常は、流産しやすい原因と言えるかもしれませんが、100%流産するという原因でもないからです。リスク因子別頻度を以下にお示しします。グラフを見ると、全体の半数以上がリスク因子不明を占めています。
出典:不育症管理に関する提言/2021
不育症では自己抗体(自分の体内にある物質に対しできた抗体、例えば抗リン脂質抗体)が影響し、血液凝固反応が活発になり、胎盤に血栓ができやすい状態になります。胎盤の血栓が血管で詰まり血管が破れて出血すると、切迫流産の出血や絨毛膜下血腫を起こします。また胎盤血栓は、子宮の血流低下による流産、胎盤機能の低下などを起こします。このため、少量のアスピリンを用いる低用量アスピリン療法、低用量アスピリンとヘパリン併用療法、ヘパリン単独療法など、血栓を作らない治療が行われます。
ヘパリン注射については、当院では通院しないで済む自宅での自己注射を指導しております。ご希望の方には診察時に詳しく説明いたします。
染色体は両親から半数ずつをもらい受けますが、数や形、構造に異常が起こることがあり、保因者(キャリアといいます)といって、表面に出ない隠れた染色体異常を持つ人は大勢います。
大部分の人は健康上の問題はなく、保因者であることを知らないまま生活をしています。ただし、ご夫婦のどちらかが保因者の場合、受精=妊娠の際にその不都合が表れて、受精卵に異常が起こり、流産の原因になることがあります。
染色体異常はダウン症候群などの数の異常と、転座や部分欠失のような構造異常に分けられ、流産の原因となるのは相互転座、ロバートソン型転座など、構造異常があるケースです。
保因者かどうか、流産しやすいかどうかなどは、血液検査による染色体検査によってわかります。しかし、現時点では、染色体異常そのものを治す根本的な治療法はありません。
「不育症と夫婦染色体異常」についてはクリニック便り2016年盛夏号「遺伝相談その② 不育症と両親の染色体異常について」にて、詳しく説明しています。参照ください。
ご夫婦のどちらかに染色体転座がある場合、受精卵に流産のリスクとなる染色体異常が起きやすくなっています。受精卵の着床前診断では、体外受精あるいは顕微授精によって得られた受精卵を、胚移植(子宮に戻すこと)する前に染色体を解析し、受精卵の染色体異常について診断することができます。その後、正常な染色体をもった受精卵を子宮に戻すことで、流産を回避できる可能性があります。 このように、受精卵が着床して妊娠する以前に、 受精卵の染色体-遺伝子の解析を行うことを、「受精卵の着床前診断(PGT)」といいます。
着床前診断について詳しくはこちら